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つじこの

一応、本とかの批評のつもり。趣味的な備忘録

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日日日『のばらセックス』3 

また日日日『のばらセックス』について。
ちょっとしつこいかな。
でも、と思う。
同時刊行の『平安残酷物語』のほうが、どこの書店でも店頭での減りはこころもち早いのだ。
未読の小説同士を比較して優劣、というか自分との相性をみきわめる技術を心得た人は稀だろうから、
要はみなさん恥ずかしがってらっしゃるのである。
エロい小説を買うのをためらっているのである(一方的な決めつけ)!
こんなことで良い本が読まれないようでは困る。
購入を迷っている人は、我々無名の読者が作者以上に恥ずかしがるいわれはないことを知るべきだと思います。

なんとなく、西尾維新の『ネコソギラジカル』とかとの比較を思いついた。
いやまあ、男性がどうにかして人為的に女性を創造する、というだけの共通点なんだけど。
でも、これ(女性の創造)を一種のフィクション論として、
虚構というものの隠喩として読んでみたらどうだろう。
西尾維新は形而上学的な概念にあれこれ肉付けしてキャラクターや筋書をこしらえているのに対して、
日日日の小説は血と肉と精液と愛と憎しみが原料で、できあがった筋書そのものが形而上学だ
(もろに私の偏見だけど、偏見をもっともらしく立証してみせるのが批評だから致し方ない。
どうせご本人たちもこんな辺境ブログ見てるわけないし、好き勝手言わせてもらう)。
だからくせものだ、とも言える。概念的な整理を施せないわけではない。
むしろ施しやすいのだが、そこに収まりきらない要素がどうしても残ってしまう気がする。
『狂乱家族日記』にしても、設定自体は西尾が零崎一賊を通じて提示した、
「見ず知らずだった者同士が寄せ集めの疑似家族を形成する」という状況とかぶっているのだが、
その結果何が起きるのか、を踏み込んで追究しえている点が違う。

たしかにどの作品をとっても西尾維新の着眼点はたぐいまれなモラリスト(人間通)ならではのそれだし、
サスペンスを整然と組織しつつ決まって結末近くで大きな盛り上がりを設けているのだから、
小説としての姿かたちはいたって端正なのだ。
にもかかわらず、である。
もっぱらキャラクター同士の関係という具体的状況の中で倫理の問題を探究していることに由来する、
わりきれない、もてあますほかないような生々しさは日日日のものだ。
是非は別にして、これはこれで大変に小説らしい特徴ではないか。
何が何でも女性を創造したいという「馬鹿みたい」(378頁)な願いが、
本物の奇跡を起こせるほどの切実さで読者の心臓に引火する。
この唯一無二の情動的な強度こそ、我々が『のばらセックス』を『ネコソギラジカル』なり、
ヴィリエ・ド・リラダンの『未来のイヴ』なりピグマリオン神話なりの亜流と断じることを禁じるもの、
あるいは少なくともその一要因である。
それだけにキャラクターの性格は、たとえ奇抜な口調や服装を伴おうと、じつはさほど明確でない。
「こいつはいつだってこういう奴だ」と断定できるほどの材料がないのだ。
どいつもこいつも実在の少年少女そのもののように不安定でつかみどころがなく、
刻々と移ろう状況の中で言動が変化していく。
この点はたぶんどの日日日の小説でもそうだ(とはいえ欺瞞や演技や変装がはびこる『のばらセックス』の世界こそが、かかる不安定性を抜きん出て誇大に、したがって巧みに可視化しているようだが)。
私はなにも揚げ足をとっているのではない。
各キャラクターの性格をあらかじめぎちぎちに詰めておかなくても話が進む小説とはいかなるものか、
という問いを提起しているのだ。
あるいは『涼宮ハルヒの憂鬱』が問わなかった、「己の全能性を自覚する全能者」の苦悩を
『ささみさん@がんばらない』が描いていることを挙げてもよい。
この点で示唆的なのが、『のばらセックス』の一応の大団円では、今後は平和な日々が続きますように、
という祈りの場面だからかあえて「気が抜ける雰囲気」(379頁)が演出されていることだろう。
静かな充実感があってとても感動的な場面だが、その美しさの幾分かは、
「ここらで盛り上がるべし」という物語の要請に登場人物を完全には従わせていないところに生じるものだ。
この肩透かし的な生動感の正体は、一体何なのか。

とりあえずここまで。
気が向いたら続ける。
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category: 『のばらセックス』

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