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つじこの

一応、本とかの批評のつもり。趣味的な備忘録

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日日日『のばらセックス』(続き) 

いきなり前回の記事から間があいてしまい、
みじんもブログらしさを目指す気配が感じられないのは我ながらあきれる。
が、まあ思いついたので書く。
日日日『のばらセックス』(講談社)についてもう少し。

個々のエロい場面についてだ。
特色として抽出できるのは
(1)男の娘(少女っぽい美少年)
(2)交合そのものに続く、妊娠・出産等「その後の経緯」への暗示
(3)くどいフェラチオ
(4)包茎へのフェティシズム
(5)性的パートナーを「犬」になぞらえる
この五点くらいか。
いずれも最近のオタク向けエロコンテンツでは定番だろう。

で、(1)(2)(3)はまあ偶然の一致として説明できるけど、
(4)と(5)については熱心かつ冷徹な事前調査を経ないかぎり出てこない結果ではないか。

なかでも(5)は興味深い。
エロマンガのヒロインの典型は一昔前は猫だったが、
現在では関谷あさみ『Your Dog』とかあるし、
もはや犬に移行しているのではないか、というのが私の持論だ
(似たことをすでに言ってる人がいたらごめんなさい)。
犬星やいぬぶろに至ってはペンネームにすら「犬」が入っているし、
藤ますやアシオミマサトも犬関係の作品を描いていたはず。
男が女を「このいやらしい雌犬め!」と罵倒したり、
逆に女が男に「あなた私の犬になりなさい」と命じたりする場面に見覚えのある諸氏も多かろう。

ではなぜ、エロマンガのヒロイン像は猫から犬にパラダイムシフトを遂げたのか。
両者の特徴を列挙すると、
猫は気まぐれで誇り高い、でも見方によってはその小生意気なところが魅力的なのに対し、
犬は頑固一徹で主人への忠誠心が強く、人間に振り回される側ということになると思う。
要するに、二人登場人物が出てくれば必ずセックスしなくてはならない、
エロマンガというジャンルの掟を考慮した場合、
どちらかのパートナーを犬扱いしたほうが頁の無駄が省けて効率がよいのだ、たぶん。

この変化は強姦ではなく同意の上での性交と、
それにまつわるキャラクター同士の信頼を濃く描けるという意味では進化かもしれない。
しかし性行為が元来抜きがたく持っているはずの暗い暴力性を表現しようとせず、
単にそれから目を背けているという意味では後退かもしれない。

いずれにせよ、小説では西尾維新の『猫物語』やら『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の黒猫やら、
まだまだ猫の時代は続きそうだ。
日日日の『狂乱家族日記』でも、自称「全知全能」の凶華様は猫娘だし。
キャラクターの内面に入り込んで独白をやらせるにしろ、
性交ほど直接的でない微妙な人間関係がもたらす葛藤を描くにしろ、
猫的な独立不羈(あるいは孤独)は小説というジャンルと相性が良いのかもしれない。
小説は他の藝術と比べると、人間(登場人物)を個として確立しようとする側面が強いからだ。
そうあらざるをえない。
何と言っても長々とつづられた言葉だもの。

ただ、小説であっても『のばらセックス』のように性行為を正面切って描くということになると話は別だ。
「子犬みたいと形容される、さほど面白味のない自分のツラ」(8頁)。
「いくら願ってもあたしはちびすけな子犬」(14頁)。
「どれだけ強がっても、あたしは十四歳の子犬」(57頁)。
「どんな狂犬も足を掴まれたらどうしようもないのだ、無力だ」(132頁)。
「君にはこれから犬のようにたくさん子供を産んでもらわなくちゃいけない」(154頁)。
「無力な子犬」(165頁)。
「いつも子犬の耳のかたちに結わえている髪の毛」(174頁)。
「飼い主の手を噛む馬鹿犬」(184頁)。
「ところ構わず粗相をするような犬っころ」(189頁)。
「何だこのひと、あたしを子犬とでも思ってるのか」(358頁)。
「捨て犬みたいだったあたしの心」(365頁)。
まだほかにもあるかもしれんがとりあえずこれだけ引用してみた。
まあ、おちば様が自分の無力さを予感するか、思い知らされる場面かな。

強引にまとめると「犬」の比喩はまさに、
犬的な一途さが裏切られ役として小説の内容上必要だから出てくるのだ。
おちば様が猫っぽかったら、たぶんどんな事件が起きてもなんだか平気そうで、
けなげさが足りなくてしまらないと思う。つまり『のばらセックス』によって、
「猫が魅惑的な個性を振りまく小説」と「犬が一方的な性的服従を見せるエロマンガ」との中間に、
「犬(っぽい少女)が降りかかる性的な災難をくぐり抜けて個人として成長する小説」が力強くも誕生したのだ。

そういえば日日日の原作で『ぽち軍曹』という漫画もあった
(犬が人間のように見えて困る軍人さんのお話)。
『ギロチンマシン中村奈々子 輪廻転生編』でも、「犬耳が生えて語尾がワンになる」という、
どう考えても小説の本筋とは無縁な機能がロリエに搭載されてたし。
「愛の人」である日日日の作品は、それゆえに犬と親和性が高い。
…のかもしれない。
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category: 『のばらセックス』

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